被災地尻目に自衛隊を中東派遣「防災より防衛」のアベコベ 日刊ゲンダイ

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被災地尻目に自衛隊を中東派遣「防災より防衛」のアベコベ

 

 各地に甚大な被害をもたらした台風19号。80人が死亡し、行方不明者の捜索も続いている。そんな中、安倍政権はホルムズ海峡周辺のオマーン湾など中東への自衛隊派遣の本格検討に着手した。大災害を尻目に自衛隊を海外派遣――。国民二の次政権の本質をよく表している。

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 ここ数年の災害時、自衛隊は大活躍だ。2016年の熊本地震では延べ約81万人もの隊員が派遣され、17年の九州北部豪雨では約8万人、昨年の西日本豪雨では約3万人が被災地で救助活動をした。今回の台風19号でも、3万人超の態勢を編成し、すでに2000人以上を救助している。

 今や「数十年に一度」の重大災害が、毎年のように発生する災害列島――。今後も想定を超える災害が予想される中、自衛隊の災害対応はますます重要になってくるが、深刻なのは自衛隊離れだ。

■コワイ任務 隊員応募が激減

自衛官等の応募者」はジリ貧。14年度まで10万人を超えていたが、昨年度は8万7562人と、ついに9万人を割り込んだ。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏が言う。

「災害時に自衛隊が活動する姿を見て、職業として魅力を感じる若者も少なくない。一方で、15年の安保法成立により、集団的自衛権行使に道が開かれました。そのため“危険で怖い仕事”と捉え、応募減につながっているのではないでしょうか」

 人気の職業になり得るのに、今や海外での戦争参加も辞さなくなった自衛隊に、若者は躊躇するのである。また、災害時、知事による防衛相への派遣要請で自衛隊が動くのも、実力組織なので、厳格な手続きが必要なためだ。その結果、機動的な対応の妨げになることもある。国防と災害対応が同居していることに、無理が生じているのだ。軍事評論家の前田哲男氏が言う。「安倍政権は、海外派遣など必要以上に防衛に力を入れる一方、災害はおろそかです。平和憲法を持つ災害大国としては、防衛は専守防衛で最小限にして、その分、災害対応を充実させるべきです。多数の国民もそう考えているはず。段階的に自衛隊員を防災専任の部署に振り分け、将来的には防災省を創設して、自衛隊とは別に災害救助隊のような組織を検討すべきです。災害救助隊なら人気の職業になり、応募は増えるでしょう。また、防衛や治安を担うわけではないので、外国人も加わることができます。災害救助に国境はありません」

 防衛から防災へ――。安倍首相を災害大国のトップから引きずり降ろすしかない。