「コロナと貧困から人々を救え」 れいわ新選組・山本太郎の列島行脚続く 積極財政で供給力を守る

他の御用メディアが黙殺するなか、長周新聞、いつもきちんと報道してくださいます。

本当にありがたい。こういうポンコツに忖度しないメディアこそ国民が支えなければならない、と、切に思う。

 

「コロナと貧困から人々を救え」 れいわ新選組山本太郎の列島行脚続く 積極財政で供給力を守る

www.chosyu-journal.jp

 れいわ新選組山本太郎代表は7月半ばから、神奈川県、愛知県、京都府大阪府兵庫県の各地でゲリラ街宣を展開している。新型コロナウイルス感染症のまん延が収束せず、秋には衆院選を控えているなかで、各地で渦巻く切実な政治要求を捉えながら、有権者との直接対話を通じて相互理解を深めていく独自のスタンスを貫き、旺盛な街頭活動をくり広げている。聴衆からは、長引くコロナ禍で浮き彫りになった日本社会の課題や政治に求める役割などについて質問や意見が寄せられ、目指すべき社会のあり方について真剣な論議がおこなわれている。7月25日に兵庫県神戸市中央区三宮でおこなわれた街宣の概要を紹介する。

 

コロナ危機を深刻にした25年のデフレ

 

 質問 今年18歳になり、選挙権を得た。飲食店に対して酒類提供中止などの措置がとられているが、今も「パチンコやめろ」みたいな街頭演説も見かける。こういう混乱はどうにかならないのか?

 

 山本太郎 新型コロナウイルスは世界中でまん延している。感染を防ぐためにみんな人と人との距離を保ったり、飲食店の利用を控えたりしているが、これを長く続けることは難しい。感染症を封じ込めるためには、お金を出すしかない。徹底的に出さなければ事業者が倒れる。事業者が倒れたら、当然失業者が生まれる。失業者が生まれたら、社会的な不安が広がって自殺者も増える。犯罪率も上がる。これはリーマン・ショックですでに経験したことだ。

 

 コロナ危機はリーマン・ショックをこえるといわれているが、国はお金の出し方をケチりまくっている。「飲食店だけお金がもらえていいじゃないか」という人もいるが、店の規模別に細かくお金が出されるわけではないので、小さなお店で「一年分の家賃が賄えた」という人もいれば、お店の規模が大きくて「協力金ではどうにもならない」という人もいる。

 

 こういうときには徹底的に国が補償することによって人々の動きを制限することをやらなければならない。本当ならば昨年初め、ダイヤモンドプリンセス号の船内感染があった後くらいに、3カ月など期間を決めて50兆円、100兆円近いお金をしっかり入れていかなければいけなかった。実際にアメリカではコロナ禍で600兆円を投じた。コロナによって社会に回らなくなったお金を国が刷って出す。お金が世の中に回らなくなり、社会が壊れる前に国がお金を入れていくのだ。

 

 だが、日本はそれをやっていない。どんどん絞っていく。持続化給付金も一回だけ。家賃支援金も終わり。雇用調整助成金もいつまで続くかわからない。未来がまったく見えないのだから、まずはお金で皆さんの生活を支え、動かないと食べていけないという状態にならないようにするべきだ。旅行業などいろんな仕事がコロナによって大打撃を受け、多くの失業者を生み出した。そうならないように国が底上げをしなければいけない。
 国による補償と活動自粛、検査を本気で徹底していたら、今頃どうなっているか? 同じ島国のニュージーランドや台湾では市中感染をゼロにし、外から人が入ってきて一時的に感染者が増えても抑え込んでいる。

 

 でも日本は違う。徹底的な検査もしていないから、本当はどれくらいの感染者がいるかもわからない。対策を徹底したニュージーランドでは、今年四月には5万人規模の音楽フェスが、ノーマスク、ノーソーシャルディスタンスで実施されている。国外から持ち込まれても封じ込める。コントロールできているのだ。

 

 日本では、この状態がどこまで続くのか? そんななかでオリンピックまでやっているわけだから常軌を逸している。わかっていてやっている。何のために? カネのためだ。アスリートは人柱だ。企業の金もうけのための駒にすぎない。

 

 アスリートは企業に雇われている。企業にとってのオリンピックは金もうけの一番大きな舞台であり、だからこそ絶対にやらなければいけないという政府の判断がある。

 

 さらに政府は自分たちの既得権者であるパソナ電通の利益を最大化する必要がある。今秋は衆院選、来年には参院選がある。マスコミにもかなり優しいタッチで自分たちのことを報じてもらわなければいけない。忖度報道をさせるためにこのオリンピックがある。

 

 オリンピック期間は特別期間であり、広告宣伝費は跳ね上がる。テレビで流れるコマーシャル。あの15秒、30秒の時間は丸ごとお金だ。このような五輪特需をマスコミに対して差し上げる。テレビ、新聞も自分たちを大もうけさせてくれた政治勢力には優しくなる。今後の選挙を考えて、自分たちの権力基盤を失わないために五輪は強行されなければならないという考えで開催された。無茶苦茶だ。

 

 補償についても、お店だけではなく、遡れば生産者まで必要だ。モノを作っている人、農作物や食料を生産する人たちまでしっかり補償されなければいけない。商品が店頭に並ぶ前までの部分にも補償していかなければ、当然ここがへこんでいく。「自己責任でよろしくね」は通用しない。疫病は個人や民間の努力でどうにかなる話ではない。

 

 日本は疫病に加えて、その前から25年間のデフレだ。経済政策の誤りによって多くの人が貧しくさせられている実態があり、国がお金を刷るのが一番早い。世界中がやっていることだ。徹底した補償と社会を極力動かさない措置のセットで初めてこの感染症は封じ込めに向かう。中途半端なことをやっていたら、いつまでも緊急事態が続くということの一番のわかりやすい例が、現在の日本ではないか。

 

 この状態は政治で変えられる。選挙に行っていない人が50%いる。この50%の人たちが「社会は変わるよ」「社会は変わるべきだ」と思い、それを投票行動に移すことによって社会は変えられる。政治はパワーゲームだ。あなたがこの国のオーナーだ。最高権力者はあなたであるということを、みんなとシェアしていきながら世の中を変えていきたい。

 

 質問 いつまでマスクを付ける生活が続くのか。早く外したい。山本太郎さんが総理大臣であれば、どれくらいでマスクのない生活をとり戻すことができるか。

 

 山本 コロナがあまりにも長引き、もう我慢も限界と思うのは当然だ。だが、政治のスタンスとしては予防原則に立たなければいけない。根拠もなく「大丈夫だ」とはいえない。「コロナは嘘だ」という人もいるが、嘘だったらインドで死者が増えて道端でどんどん人が焼かれていくような光景や、大阪で医療崩壊が起きることはない。コロナは「ない」わけではない。

 

 ただコロナに関してまだわからないことは多い。であるなら、予防原則に則り、最悪の事態を想定するべきだと思う。徹底的に検査をして感染者を捕捉する。欧州では早くから実施されている下水PCR検査も、日本ではほとんどやられていない。技術はあるが、やる気だけがない。

 

 感染者は全人口のほんの一握りだけであり、これらの人を捕捉し、経済的にも保護して隔離していかなければいつまでも続く。まず基本的なことをしっかりとやることが政治に必要だと思う。

 

 私たちが政権を担当するなら、半年で市中感染ゼロに持っていく。かかる費用は200兆円。収束は難しくても、基本的に国内には感染者がいないという状態にし、ノーマスク生活ができるようにする。危機を招いたのはコロナだけでなく、その前の25年のデフレだ。コロナ対策とデフレ脱却をセットでやっていく。

 

先進国中で最下位  投資削った教育や公衆衛生

 

 質問 れいわ新選組の政策に「すべての教育無償」「奨学金はチャラに」とある。現在は義務教育は無償とされているが、やはりお金がかかる。教育無償化や奨学金チャラについて具体的に聞きたい。

 

 山本 580万人の方々の首を絞めている奨学金は9・1兆円あればチャラにできる。小学校から大学院まで教育無償化には年間4兆円だ。この費用は担保できる。

 

 教育を受ける権利――より成熟した国になっていくうえで、多くの方々に教育を受けていただき、知識や見識を深めてもらうことは国の財産だ。わかりやすくいえば先行投資だ。

 

 例えば、この国で高等教育を受けようとしたら費用がかさむ。だから大学生の2人に1人が奨学金を借り、そのうち7割は有利子だ。教育を受ける若者に対してお金を貸し、なぜ利息までとるのか。この商売によって、年間300億円ぐらいの利息を懐に入れる人たちがいる。学びたい若者までも金融商品にしてしまうような国は滅びる。小泉政府時代から始まったことだ。教育を蔑ろにする国は、その他のことに対しても非道であると私は思う。

 

 大卒で3、400万円の借金を背負い、大学院では1000万円近くの借金を背負った状態で社会に出て、安い月給で家を借り、誰かと結婚して子どもをつくるなど到底無理な話だ。パートナーも同じ状態であればなおさらだ。少子化が問題といいながら、少子化の原因を作っている。

 

 OECD(先進国グループ)のなかで、教育機関に対する公的財政支出のGDP比【グラフ①参照】を見れば、国が教育にどれくらいお金を使っているかがわかる。日本は最下位だ。そのような国では教育の負担は、個人やその家族にかかるシステムになっていく。OECD各国の高等教育機関への公的財政支出(GDP比)を見ても、日本は最下位。北欧諸国の3分の1以下だ。

 

 その他の分野でも蛇口を絞り続けているのが現在の日本だ。例えば公衆衛生。コロナで保健所が機能していないことが問題になった。その要因として保健師の数がどんどん減らされていた。

 

 1992年には全国に852カ所あった保健所は、2020年には469カ所に半減している(厚生労働省保健局調べ)。危機のときに役割を発揮する公衆衛生部門をどんどん絞っていった結果、実際の危機がやってきたときに対応できない。カネを出さない緊縮財政をおこなえば、それは人の命に直結する。

 

 公共事業全般についても、政府によるインフラ整備や公団・公社がおこなう設備投資・住宅投資――「公的固定資本形成」(公共投資)を見ても、消費税を5%に上げた橋本龍太郎が総理大臣だった1996年から小泉時代の2007年までの10年間で21兆円減らされている。予算半減だ。

 

 「公共事業=悪」と考える人もいるが、公共事業は歩道のバリアフリー化、災害に備えた防災対策など、人々の暮らしを守る、雇用を守るうえでも非常に重要な施策だ。「コンクリートから人へ」といった民主党政権がつるし上げられたが、彼らが削減した公共投資はわずか3兆円程度だ。

 

 歴代自民党政府が削ったのはその7倍だ。いろんなところの蛇口を絞ってお金を出さないようにしたうえで、自分たちと仲良しの一部分にだけたっぷり回す。「そんなこといっても日本は豊かじゃないか」「成長し続けているだろ」という人もいるかもしれないが、それは間違いだ。

 

 世界と比較してみる。IMF国際通貨基金)のデータを見ると、世界140カ国以上の戦争・紛争をやっていない国の20年に及ぶ政府総支出(政府が出したカネのすべて)の伸び率【グラフ②参照】を見ると、日本は堂々の最下位だ。つまり、世界一その国に生きる人々に対してカネを出さないドケチ国家だ。投資もしないのにリターンがあるわけがない。

 

 その10年間にどれくらい経済成長したのかを、名目GDP(国内総生産)の伸び率【グラフ②下参照】で見ても、日本は最下位。グラフにもならないくらい低レベルだ。

 

 25年間デフレから脱却できず、社会にお金が回らず、格差は開き、子供の7人に1人が貧困。コロナが来る前から一人暮らし女性3人に1人が貧困。こんな景気の悪い状態を続けているうえに消費税だけ上がっていく。一方で、お金持ちのために法人税所得税だけがしっかりと下がっていく。こんな無茶苦茶な政治がおこなわれた結果、デフレから25年も脱却できない。

 

 そのうえコロナまで襲ってきたのが現在だ。国がやるべきことははっきりしている。「金を刷れ」だ。日本は独自通貨として円を持っている。アメリカはドル、イギリスはポンドだ。独自通貨を持っている変動相場制を採用している国であれば、予算が足りないときにはお金を刷れる。これは世界の常識であり、アメリカはコロナ禍に600兆円以上のお金を社会に出している。すでに5回現金が配られている。

 

 日本では10万円と2枚のマスク。「あとはみんな頑張ってくれ」。それは無理な話だ。この神戸市で一つの事業者が倒れれば、その事業者がこれまで回してきたお金や仕事は消える。雇われていた従業員は失業する。彼らが地域で回してきたお金もゼロになる。この数が積み重なれば、社会は壊れる。一番安くつくのはお金を入れることだ。社会が壊れてからでは、立ち上がる体力が残っていない。体力を温存してもらえるような策をとらなければいけない。

 

コロナ禍で逼迫  医師や看護師も足りず

 

 質問 基礎疾患があるのでワクチンを2回打った。これから消費税をゼロにして、コロナも収束させるにはどうすればいいのか。今ワクチンが滞っている。治療薬の開発もされるべきだと思うが、どう思うか?

 

 山本 治療薬としては、例えばイベルメクチンのようなものがある。ただ特許が切れてしまった薬は医薬品業界的にはあまり使いたくないものなのかもしれない。新薬を開発して高値で売れるという商売上の旨みがないからだ。だが、いつ完成するかわからない特効薬やワクチンだけに照準を合わせると、この国に生きる人々の生命の安全は守れないと考える。

 

 感染対策の基礎である徹底的な検査をしながら、ほんの一握りのコロナ感染者を捕捉・保護して、社会を回していくことが必要だ。薬やワクチンがあれば、検査はいらないということにはならない。

 

 医療の供給量もいきなり増やすことはできない。この国は保健所だけでなく、病床数に対する医療従事者の数もかなり脆弱な状態にある。OECDのデータでは、人口1000人当りの医師数は、OECD平均の3・5人に対して、日本は2・4人。人数では日本はOECD平均よりも13万人も少ない。

 

 100床に対する医師数も、イギリスは108・1人、アメリカは93・5人、ドイツは51・9人、フランスは51・8人だが、日本は18・5人だ【グラフ③参照】。これは日本で医学教育を受けるための経済的ハードルが高いことも関係していると思う。

 

 同じグラフで、100床あたりの看護師数を見ても、アメリカは419・9人、イギリスは306人、フランスは168・6人、ドイツは159・1人だが、日本は86・5人と極端に少ない。

 

 看護師でいえば、退職された潜在看護師といわれる方々が全国に70万人いる。医療逼迫のさいに国や東京都も強調していたことだ。だが、働き方の問題や給与の問題が大幅に改善することが前提でなければ集まってもらえない。

 

 例えば単純計算で、現役に加えて新しくコロナ対応に加わってくれる医療従事者にボーナスとして一人100万円を出すとする。医師から薬剤師まですべての医療従事者277万人に支給したとしても約2・7兆円だ。

 

 さらに介護職員187万人に支払っても1・9兆円。介護施設などは、ベッドがあるということで、医療行為ができない施設なのに放置されて施設内感染が広がった事例もたくさんある。プライベートは一切なく、コロナが始まってから外食を一回もしていない、子どもとも遊べないという人たちが、ボーナスも減らされている状況がある。こういう人たちにも危険手当を出すべきだと思う。それもされず自助に委ねたため、離職者も増え、混乱が長引いている。

 

政策遂行のうえでは 行政現場の力に委ねる

 

 質問 政策を遂行していくためには、官庁や官僚組織をうまく使いこなす必要があると思う。だがワクチンにしても、給付金にしても、国や地方自治体のオペレーション能力が落ちているような気がしてならない。政策だけでなく、それを実行していく能力、いかにして官僚組織や地方自治体を動かしていくのかについても考えを教えてほしい。

 

 山本 掲げる政策がスムーズにおこなえるか否かは、それをいきなり始めるということでは連携がとれないと思う。例えば2020年、コロナ禍での一斉休校も、事前になんの伝達もしないまま政府が勝手に発表し、しかも数日後には始まるというような政治の思いつきで社会を混乱させた。可能性や選択肢について事前に共有し、心の準備をしてもらい、そのために何が必要かを共有していくことが必要だ。

 

 官僚が本気を出せば混乱する話ではない。行政を動かしていくうえで必要なことを一番緻密に把握している彼らを、突然の思いつきではなく、実際に一定の時間を与えながら指示していく。練習でやってないことを本番ではできない。法律立案や改正審議は実行に移すための準備でもある。

 

 例えば、10万円の給付金が一度だけあったが、私たちはコロナ収束まで毎月給付金を出すべきだという考えだ。私たちの政策として、ゆうちょ、郵便局を再国有化するというものがある。ゆうちょの口座を全員に付与する。給付金のための口座を全員に持ってもらうことによって全国の自治体の手間が省ける。

 

 給付金から生活保護の審査などあらゆる業務で役所がパンクした。それが大阪維新であれば、業務にパソナ派遣社員を入れている。だが派遣の人たちは業務の中身がわからないから、役所の人たちが対応するよりも時間がかかり、休業支援金の給付が大幅に遅れている実態がある。だからこそ、国が口座に入れるだけで済む状態にする。受け皿を用意しておく。

 

 仕組みをどう動かしていけばスムーズであるかを把握している人たちがたくさんいるのが行政組織だ。政治家が自分たちの意志を速やかに形に落とし込んでいくうえで、行政の人たちとの繋がりをつくるためには内閣人事局を活用する。

 

 安倍政権のときに官僚の人事権を握り、忖度政治を作ってしまったと批判されている人事局だが、そのやり方の善悪は別として、自分たちの進めたい方向性に向かって足を引っ張るような官僚が組織の上にいては困る。それで転覆させられたのが民主党政権だった。

 

 行政府の長が示す世界観に反対したり、その足を引っ張ることを避けるためには、私たちの政策に前向きな人を責任者につけていくことは必要なことだと思っている。

 

 コロナや災害対応でも、地方自治体に対して国が命令する話ではない。地方のことは地方が一番よくわかっている。現場のこともわからない国がトップダウンでやれば、余計なことをすることにもなる。地方都市にとって必要なのは、財源の権限を渡すということだ。国は予算を付けてあげる。具体的には自治体の長が判断していくべきだと思う。

 

 質問 国としては部分最適だけでなく、全体最適も追求しなければいけないと思う。国としてのルールや仕組みづくりなどについてはどう考えるのか?

 

 山本 基本的に国と地方では権限は分かれていると思う。国が地方に対して影響力を持ちすぎると、地方の自由が奪われる。これでは地方分権にならない。今やっていることは、地方に対して財源で紐付けして従わせている。災害対応でも国主導は間違っている。被災地のことについて最も把握している自治体の主導にし、国は財源やマンパワーを注ぐべきだ。

 

 全体的という点では、国政の歪みとしての人口減少や一極集中などの是正が必要だろう。例えば、最低賃金を全国一律にすれば、都市部への人口集中を避けられる状況が作れる。菅政権がやろうとしている企業任せの賃上げでは中小企業が淘汰されるが、国が補填する形での最低賃金1500円をやるなら、地方を活性化させ、人口集中は解消されていくと思う。

 

 さらに南海トラフなどの災害を考えるのなら、地方にバックアップ機能を作っていくことも必要だ。これによって地方にお金を回し、三大都市圏に集中したパワーバランスを是正していく。その仕組み作りは、私たちが目指す社会像を受けとったプロの行政マンたちに委ね、彼らが整理していくものだと思っている。

 

国債発行 1年間で200兆円は可能

 

 質問 コロナで財源が少なくなっているのにどうやって消費税が廃止できるのか?

 

 山本 今から32年前の1989年。世界の時価総額ランキングのトップ10社の中に、日本企業は7社入っていた。トップ50社になれば32社だ。すごい勢いだ。それが2019年のランキングでは、トップ10社に日本企業はゼロ。トップ50社では、かろうじてトヨタ自動車1社が43位に入っているだけだ。日本経済がどれほど疲弊したかがよくわかる。

 

 国内で生まれた所得総額を示すGDP(国内総生産)は、個人消費+民間投資+政府支出+(輸出-輸入)で決まる。このうち一番大きなエンジンが、全体の六割を占める個人消費だ。個人消費が弱れば民間投資も弱る。ものが売れないのに余計な投資はしない。このようなときは政府がお金を出すしかない【図④参照】。減税や給付金など、個人消費を上向けるための政策が求められる。

 

 だが、日本は景気が悪くても消費税を上げてきた。弱っている消費にさらにブレーキをかけるのだから、景気がよくなるわけがない。

 

 京都大学藤井聡教授の調べによると、世界のGDPのうち日本が占める割合は、1995年には17・3%(米国の7割、欧州の5割)だったが、2014年には5・7%に縮んだ。中国の半分、米国の4分の1、欧州の5分の1だ。さらにコロナ前の試算ではあるが、2040年には2・8%にまで縮むと予想している。世界が成長するなかで日本だけが落ち込んでいく。「成長しなくても日本は日本らしく」という意見もあるかもしれないが、これが示すことは、今よりもみんなの生活がより厳しくなるということだ。

 

 OECDが各国の「残業代を含む民間部門総収入」を時給算出した。それを1997年から2017年の20年間で比較してみると、韓国は150%、イギリスは87%、フランスは66%、ドイツは55%のプラスなのに、日本だけがマイナス9%だ。主要国で唯一の下落だ。労働賃金がどんどん下がっている。労働環境を破壊し、税金のとり方を歪め、一部の人だけをもうけさせた結果だ。
 実質賃金も右肩下がりだ。これが上がっているのなら自民党に投票するのも納得できる。しかし、なんの恩恵も受けていないどころか、逆にどんどん首が絞まっている。

 

 厚労省調べの所得の中央値も1995年は545万円だが、2019年には437万円まで下がった。25年で所得の中央値が108万円も低下している。これは人災としかいいようがない。

 

 2017年の日銀調べによる「貯蓄ゼロ世帯」は、20代では61%、30代で40・4%、50代で43%だ。バブルも高度経済成長も見込めない崖っぷちを歩き続けているのがこの世代であり、彼らが高齢者になったときの苦難をわかっていながら誰も手を差しのべない。「洪水が来た時には自分はもういませんよ」という話だ。わかっていて見て見ぬ振りなのだ。

 

 25年のデフレでここまでの惨事に持ち込まれ、コロナまでやってきた状況下では、大胆にお金を出すしかない。
 2013年に麻生副総理は、国の借金について「日本は自国通貨で国債を発行している。刷って返せばいい。簡単だろ」とのべている。日銀総裁FRB(米連邦準備理事会)の議長も同じことをいっている。

 

 安倍前総理も先日、次の選挙にむけて名誉挽回の機会を狙って次の様にいっている。「政府と日銀の連合軍で200兆円という対策費を打ったこのコロナに対して、“子どもたちの世代にツケを回すな”という批判がある。でも必ずしもその批判は正しくありません。政府が発行する国債は日銀がほぼ全部買いとってくれている。日銀は政府の子会社の関係であり、連結決算上、実はこれは政府の債務にもならない」。

 

 つまり、政府が国債発行し、それを民間の金融機関が買い、それを日銀が買いとることは、政府にお金を貸している相手が民間から日銀に移っただけのことだ。政府は日銀に利息を払わなければいけなくなるが、日銀は諸経費を差し引いて残った利益はそのまま国庫納付金として国に戻す仕組みになっている。

 

 日銀と政府は親子関係であり、日銀の国債買いとりは、国の借金を日銀が支払っていることになる。つまり借金であっても財政への負担がない。

 

 日本政府は昨年の三次にわたる補正予算112兆円をすべて国債発行で賄っている。日本が破綻するのならもう破綻している。ところが金利も為替もほとんど動いていない。

 

 安倍前総理は続けて、「今の状況であれば、もう1回、2回でもいい。大きなショットを出して国民の生活を支えていく……」といわれている。でも、ちょっと待ってほしい。あなたは昨年まで総理大臣で、10万円給付1回と2枚のマスク以上やっていないのに、選挙前になって一体何をいっておられるのか?

 

 しかし、政府の債務は、政府が通貨を発行した記録にすぎず、現状ではそれによって財政破綻することはないのだ。
 それでもインフレ率2%という上限がある。日本の供給能力(生産力)に対して、お金の量が増えすぎるとインフレが起きる。それを鑑みても、1年間で200兆円レベルの通貨発行が可能だ。

 

 数年にわたってお金を出していきながら、デフレから脱却できずに壊れた社会、人々の生活、そしてコロナで壊された社会をもう一度立て直すというのが、私たちれいわ新選組の政策だ。

 

 疑問を感じたらぜひ自分で調べていただき、納得されたのであれば、力を貸してほしい。本気の力を集めて、一緒に実現させたい。