「植草一秀の『知られざる真実』」
                                     2019/09/29
             関電放射能汚染マネー環流事件に発展か
                     第2443号
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次の衆院総選挙は「政策連合」で戦うべきだと思う。
私たちにとって重要なのは政策の実現だ。
政権交代そのものに重大な意味があるわけではない。
政権が変わっても政策が変わらなければ意味がない。
政権を刷新して実現するべき政策のなかで、とりわけ重要なものを明示し、そ の政策を実現するための「政策連合」を構築して政権を樹立する。
選挙の際に、基本的な政策公約を明示して、基本政策公約を共有する「政策連 合」を構築するのだ。
その基本政策公約として
1.消費税廃止へ(最低でも5%への引き下げ)
2.最低賃金全国一律1500円政府補償での実現
3.原発稼働即時ゼロ
を掲げる。
これは、オールジャパン平和と共生が7月21日の参院選に向けて提示したも のだが、これを次の衆院総選挙の基本政策公約として提示する。
さらに、日本全国の各地域で、地域に根差す重要な政策課題について、最重要 政策公約を加え、それぞれの地域で「地域政策連合」を構築することを検討す るべきだ。
そして、基本政策公約を共有できる者のなかから、衆院選統一候補を絞り込む プロセスを速やかに始動させる。
次の衆院総選挙がいつ実施されるか不透明であるから、候補者選定作業を急ぐ 必要がある。

関西電力の現最高幹部ならびに元最高幹部が福井県高浜町の元助役から高額の 金品を受領していた事実が発覚した。
巨大不祥事の噴出だ。
リクルート事件に匹敵する破壊力がある。
この問題に関連して実施された関西電力による社内調査では関西電力役員らが 3億2000万円の受領を認めた。
金品受領を認めた役員は20名で関電の原発担当部署の経験者が中心だった。
この20名は高浜原発の再稼働などを巡り元助役との折衝や接点が多く、多額 の金品を受領する関係につながったとみられている。
関西電力などによると、金品を受領したのは八木誠会長、岩根茂樹社長、豊松 秀己元副社長ら20名。
八木会長と豊松元副社長は原子力事業本部長、岩根社長は原子力保全改革推進 室長を経験している。
受領額が最も多かったのは豊松元副社長であったとされる。
関電の20名に金品を提供していたのは高浜町の元助役である森山栄治氏で、 本年3月に90歳で死去している。
同町の地元業者などに幅広い人脈を持つ地元の有力者だったとされる。
電力会社が原発立地自治体等に流し込む巨大な資金の原資は消費者から電力料 金として徴収したものである。
また、国は原発事業を推進するために原発立地自治体に巨大な交付金を注いで いる。
この巨大な原発マネーに多くの利権関係者が群がってくる。

その巨大な原発マネーの一部が電力会社幹部に還流していたとなると看過でき ない重大な問題になる。
関電幹部が「一時的に預かっていたもの」と発言したことが報じられたが、問 題発覚までに資金返却されていなかったのなら通用する弁解にならない。
問題が発覚したのは、金沢国税局の調査で、森山氏が原発関連工事を請け負う 高浜町の建設会社から工事受注に絡む手数料名目で約3億円を受け取っていた ことが判明ことにある。
この事案に関する調査で、さらに森山氏から関電役員らに金品が渡っているこ とが確認された。
森山氏は調査に対し「関電にはお世話になっているから」と説明したと報じら れている。
工事経歴書などに基づく調査で、高浜町の建設会社が2015~18年に原発 関連工事を25億円受注していることが判明している。
つまり、関電が巨額の事業を発注して資金を投下。
その資金の一部が森山氏を通じて関電幹部にキックバックされたという図式に なる。
典型的な業務上横領、特別背任の疑いが浮上している。
日産会長を解任されたカルロス・ゴーン被告と類似した構図が見え隠れする。
原発を推進する巨大電力会社のトップが原発マネーを使って私腹を肥やしてい たということであれば、れいわ最大の巨大経済不正事件ということになる。
工事代金の還流により関電役員らが私的な利益を得ていたのであれば、当然の ことながら、刑事事件としての立件が視野に入る。
日本の警察・検察・裁判所は、原発放射能事件においても電力会社の刑事責任 を問わない異様な対応を示しているが、その異常さを今回事例に援用すること は許されない。
今後の捜査の進展が注目される。

原発問題は主権者を二分する最重要政治政策課題だ。
安倍内閣原発推進の旗を振っているが、本来あり得ない選択だ。
東電福島第一原発の事故で日本は消滅しかけた。
たまたま陸地東端で事故が発生し、風が西から吹いていたため被害が最小に抑 制された。
原発の爆発が相次ぎ、職員の現場からの撤退が実行される寸前まで事態は進行 した。
半歩誤れば日本は消滅する状況に移行した可能性がある。
ギリギリのところで国土の消滅という事態を回避できただけなのだ。
原発事故発生原因は特定されていない。
津波によって事故が発生したのか、その前に地震によって原発が破壊されたの か。
現時点で原因は確定されていない。

福島第一原発で発生した地震動レベルの揺れは日本のすべての原発で発生し得 る。
原発の耐震性能は福島原発事故も大きく高められていない。
日本では2007年に4000ガルを超える地震動が観測されているが、この レベルの揺れに耐える設計能力を有する原発は一基も存在しない。
2000ガルを超える地震動を原発建屋内で観測してしまった東電柏崎刈羽原 発の1~4号機の耐震性能が2000ガル超まで引き上げられたが、これ以外 の原発の大半では、性能基準が1000ガル以下に設定されている。
直下型の大地震が発生すれば、日本のほぼすべての原発が福島第一のような事 故を引き起こす可能性を有している。
この状況下で原発稼働を推進するのは狂気の沙汰である。
フクシマの教訓から何も学んでいないということなのだ。

原発ビジネスに巨大なマネーが注ぎ込まれている。
競争原理の働かない随意契約主流の原発ビジネスでは価格が適正価格である保 証がない。
適正価格から大きく乖離していることが常態であると考えられる。
この適正価格を離れた表面価格と実勢価格との乖離が裏金ねん出の原資にな る。
その裏金がさまざまなかたちで電力会社に還流していると見られる。
その資金の流れは電力会社にとどまらないと見られる。
原発マネー還流の本丸は電力会社幹部ではなく、政治屋である。
原発マネーが政治屋に還流していたという事実が、今後発覚することになるだ ろう。
安倍内閣原発稼働推進という「狂気の沙汰」に突き進んでいるのは、原発マ ネーが生み出す巨大な裏金資金と関係しているのだと思われる。

この図式は兵器購入と通じる。
安倍首相は豆腐を買うような感覚で1兆、2兆の兵器購入を簡単にトランプ大 統領に言明する。
その巨大費用のすべてを負担するのは主権者である国民だ。
海外への巨額資金供与、兵器購入費用が国民の血税で賄われている。
安倍首相が湯水のように使う海外旅行費用もすべて主権者の血税で賄われてい るものだ。
兵器の価格もあってないようなものだ。
売り手が提示する価格がそのまま販売価格になる。
売り手の「言い値」通りに資金が支払われてしまう。
これを私は「いいね!ビジネス」と称してきた。
売り手にとって、こんな楽な商売はない。

ただし、この商売を認めてもらうためには、「売り手」が「買い手」に便宜を 図る必要がある。
「売り値」を思い切り引き上げるのを認めてもらう代わりに、売上金から生ま れる超過利潤の一部を「買い手」にキックバックするのだ。
こうすることによって、「売り手」も「買い手」もハッピーになる。
アンハッピーなのはすべての費用を負担する主権者国民である。
安倍首相が大好きな「ウィンウィンの関係」とはこのことを指している。
安倍内閣が兵器購入や原発ビジネスに著しく積極的な理由がここにあると考え られる。
原発マネーの還流問題は国家の原発政策、国費投入ともかかわる重大問題であ る。
10月4日に始まる臨時国会で徹底的な真相解明を行わなければならない。